医療機器部品の金型製作で求められる衛生基準と品質管理の実践
200tのパワーを備えたプレス機を保有するザオー工業です。医療機器部品の製造において、衛生基準と品質管理は単なる付加価値ではなく、患者様の安全を守るための最重要課題です。プレス加工業者を選定する際、これらの基準をどの程度実装しているかが、長期的なパートナーシップの成否を左右します。医療機器部品は、ペースメーカーから整形外科インプラント、カテーテルなど多岐にわたり、その用途によって求められる精度や清潔度も異なります。だからこそ、単なる「加工ができます」という企業ではなく、医療業界特有の要求事項を深く理解し、実践している企業を選ぶことが重要なのです。
ポイント1:医療機器製造に必須となる衛生管理体制
医療機器部品のプレス加工では、製品が最終的に患者様の体内に入る可能性があるため、製造環境の清潔さが極めて重要です。一般的な産業製品と異なり、医療機器部品を扱うプレス加工業者には、クリーンルーム※1の完備や定期的な環境測定が必須となります。
当社では、ISO13485※2といった国際基準に基づいた衛生管理体制を構築しており、金型やプレス機の洗浄プロセス、作業員の衛生教育を徹底しています。具体的には、プレス加工前後の工具・治具の洗浄基準を明確に定め、使用する潤滑油や脱脂剤についても医療用グレードのものに限定しています。また、作業員は定期的に衛生講習を受講し、異物混入防止や適切な装備の着用方法を習得しています。
特に重要なのは、異物混入を防ぐための多段階管理です。微細なバリ※3や金属粉が混入すると、医療機器としての機能が損なわれるだけでなく、患者様に深刻な健康被害をもたらす可能性があるため、プレス加工後の検査工程における異物除去と確認が不可欠です。当社では、加工直後の磁力フィルタリング、次工程への納品前の目視検査、さらに依頼元での最終検査までを視野に入れた包括的な異物管理プロセスを整備しています。
プレス加工業者選びの段階で、こうした衛生管理体制が実際に機能しているか、また定期的な外部監査や認証取得状況を確認することは、製品の安全性を確保する第一歩となります。見学時には、クリーンルーム内の気圧管理状況、作業員の装備状況、清掃記録の整備状況などを実際に目で確認することをお勧めします。
ポイント2:厳密な品質管理体制が競争力を生む
医療機器部品のプレス加工では、寸法精度や表面品質に関する厳格な管理が求められます。わずかなズレが治療効果や安全性に影響を与える可能性があるためです。例えば、心臓ペースメーカーの電極部品であれば、0.1mm単位の寸法誤差でも電極との接触不良を引き起こす可能性があり、整形外科インプラントであれば表面粗さが骨との生着性に大きく影響します。
プレス加工業者は、CAD※4データに基づいた設計値と実際の加工結果を、複数の検査段階で照合する必要があります。当社では、デジタルマイクロメーター※5や画像測定装置といった最新の検査機器を導入し、全数検査※6体制を整えています。さらに、金型の劣化を早期に発見し、加工精度の低下を防ぐための予防的な保全管理も実施しており、これにより安定した品質の供給を実現しています。
具体的には、ロット毎に最初の5個と最後の5個を取り出してサンプル検査を行い、同時に10個ごとにプロセス能力指数(Cpk)を計算して管理限界内に収まっているか確認しています。また、金型の寿命管理も重要で、プレス回数や磨耗状況を記録し、規定の打数に達する前に予防的なメンテナンスを実施することで、加工精度の安定性を確保しています。
プレス加工を委託する際には、単なる加工能力だけでなく、検査機器の保有状況、検査員の資格取得状況、品質管理システムの構築状況など、こうした品質保証体制の充実度をしっかり評価することが重要です。
ポイント3:トレーサビリティー※7と継続的改善の実装
医療機器部品には、製造履歴を追跡可能にするトレーサビリティーが義務付けられています。どの時期に、どの金型で、どのプレス機を使って加工されたかを記録し、問題が生じた場合には迅速に対応できる体制が必要です。万が一市場で不具合が発生した際には、該当するロットの全製品を特定し、必要に応じて回収対応をしなければなりません。
プレス加工業者には、製造データの電子化と保管体制の整備が求められます。当社では、加工条件や検査結果を一元管理するシステムを導入し、過去の履歴を遡及調査できるようにしています。具体的には、バッチ番号、加工日時、使用した金型のロット番号、プレス機の稼働状況、実施した検査の結果、検査者の署名、客先への納品日まで、すべてをデータベースに記録しています。加えて、定期的な内部監査と顧客フィードバックに基づいた改善活動により、継続的に加工プロセスを最適化しています。
例えば、検査で不具合が見つかった場合、その原因を徹底的に追跡し、プロセス改善案を立案・実行・効果確認までを行うPDCAサイクルを回しています。また、顧客からの問い合わせやクレームに対しても、即座に該当製品の製造履歴を確認し、原因分析から再発防止策の提案まで、積極的にサポートする体制を整えています。
医療機器部品のプレス加工業者を探す際には、このような透明性と改善姿勢を持つ企業を選ぶことが、製品品質の向上と信頼関係構築につながるのです。委託先を決定する前に、トレーサビリティーシステムの詳細確認、過去の問題対応事例の聴取、品質改善の実績などを、実際にヒアリングすることをお勧めします。
—
※1 クリーンルーム:空気中の微粒子を除去し、清潔に保つ特殊な室
※2 ISO13485:医療機器製造の国際品質管理基準
※3 バリ:金型加工時に発生する不要な突起
※4 CAD:コンピュータで設計図を作成するソフトウェア
※5 デジタルマイクロメーター:0.01mm単位で寸法を測定する工具
※6 全数検査:製造したすべての製品を一つひとつ検査すること
※7 トレーサビリティー:製品の製造履歴を追跡・記録できる仕組み

コメント